LEL参戦記9 フィニッシュ

起こってしまったことは仕方ないのだが、しかし悔やまれる。
なぜ走っている最中に「寝てもいい」と思ったのか。これこそがロングライドの怖いところなのかもしれない。

走り出しても、どうやれば時間を戻せるのか、なんてことを考えながら走っている。

夢だったらいいなぁ、しかし夢だと今の残り距離よりも増えるかもしれない・・・悩ましい!

幻覚を見たり疲労を感じたら走るな、という人もいるし間違っているとか否定することはない。
が、制限時間が存在し常識的な距離(多分一日で80kmぐらい、だろうか)を越えている時点で、距離が伸びれば伸びるほど、それはどんどん鍛えていかなくてはいかなくて、それでもどこかでそのバランスの崩れるところがある。そんな幻覚を見るようなことはやめてくれ!と言っていた人がPBPで一番きつかったのはカッパが応援していた待ちだったよなぁ~って言っていたし、ちゃんと寝て走っていた人から得体のしれない幻覚を聞くと、ゆっくり制限時間ギリギリで走って寝ても幻覚を見るし、ゆっくり走っても膝が痛くなってるやん!と思うわけである。極論、だったら走るなよ、としか言えない。

夜明けのタイミングは寒い。一番寒いのは夜明けの瞬間だ。
今回荷物をミニマムに削れている要因の一つは、朝方の一番気温の下がるタイミングを走ることを避けるという方法を選択したから。これにより防寒具関係1セットが排除して軽量化に繋がっている。それでも最後となるこの日は一番冷え込む朝方を走り切る決断をする。
それは直前まで寝ることができたこと、そして残る距離は100kmもない。ここまで来たらさっさと走ってフィニッシュするほうがいい。少なくとも気持ちが楽だ。
そして走りたかった理由の一つでもあるが、何よりもどうも雰囲気的に全体でトップ10前後にいるのは間違いない。Wi-Fiに繋げていないので確信はないが、周りのライダーの雰囲気からしてもそんな感じだ。あまりにもチェックポイントでのライダーが少なすぎる。ほぼほぼ抜き終わっているようだ。

朝方の冷え込みは今までで一番ひどい。完全に真冬。気温は体感的に言うと確実5℃を下回っている。それも8月なのに。
PBPもだがLELもというかヨーロッパは、夏だからって朝からTシャツでは過ごせない。

太陽の力は偉大。太陽が昇り始めると同時に気温もうなぎ上り。
最終のチェックポイントグレートイーストンは休憩するという感じのチェックポイントじゃない。しかし前回も今回もなぜか暖かいスタッフに取り囲まれて、タッチ&ゴーできずに、コーンフレークを食べてからスタートした。ちなみに前回の全工程で一番美味しかったものは?と聞かれて、ここグレートイーストンでのコーンフレークだったと答えたら、みんな苦笑していた。
でもコーンフレークの本場だし牛乳もヨーロッパは美味しいし・・・
朝6時37分にグレートイーストン。これは

コーンフレークを食べれ!!

って言われている気がする。何より、こんな早い時間にスタッフは既に待機していて、ほとんどの参加者が来ていないからか、到着するとすごいテンション爆上がりなのだろうというのは理解しているが、それでもこの暖かい笑顔とホスピタリティは、コーンフレークを食べてからスタートするのがここの正しい利用の仕方なのかしれない。


ラスト50kmほど。もうすぐだが2時間ほどかかる。事故のないように(車が増えてきている)安全第一。そして無事8時32分、フィニッシュに到着。グレートイーストンでコーンフレーク食べてスタッフと少し談笑していたことを考えるとこの区間無茶苦茶速い(笑)
トータル92時間9分
時間は前回より9時間ほど余計にかかっている。が、装備している荷物の量そしてコースも延長されているなどを考えると妥当な範囲だろうか。前回より時間はかかってしまったが気持ち的にはリベンジできた感覚だ。
そして全体で10番目タイムだったようでまずまずだ。

フィニッシュにはマツダCX5と共に岩佐くんが迎えに来てくれていた。
今回スマホを現地で繋がるようにはしていなかったので、彼にはかなり迷惑をかけていたが、主催者のトラッキングのおかげで位置は把握できていたようだ。
比較的寝てからスタートしたからか倒れそうな状態でもなく、むしろこんなに余力が合っていいのか?と、なにに申し訳ないのかわからないが、いずれにせよ体はそれほど疲れていない。
まぁPBPの時もそうだったが、きっと1週間もすれば疲労がとめどもなく溢れてきて、少し追い込んだことに後悔することになるのかもしれない。今はとりあえず「つつがなく」だ。

今回も個人的なチャレンジに対し、たくさんの人の協力、そして応援してくれたスポンサー企業さまに、ただただ感謝だ。
走っているのは自分自身だが、走るためのバックアップ、サポートがあるからこそ、本気で楽しめるのだ。

しかしこの手のウルトラロングなブルべを走っていると、まだまだ上手に走れたんじゃないか?っていつも思う。
実走のスピードを上げるほうはあまり興味なく、むしろ装備のセレクトだったりが多いのだが。
今回スポドリはピンクイオンさんからちょっと多いなって言う量のスティックをいただいて持参したものの、あまりの暑さで最後は底をついていた。ピンクイオンの後半まで飲み続けられるテイストがすごくよくて、ラスト200kmほどはなかったことで少しきつかった。
あと毎回チェックポイントではシューズを脱いでビニールのソックスのようなものを履いて施設内を歩いていたが意外と疲れるので、今度は機内用のスリッパとか持参しようかなんて考えていた。

コロナの影響で開催が1年遅れたことで、少しモチベーションも下がり気味だっただったが、走り出してみればそんなことも忘れていた。
前年イタリアのミリアは日本から行くのが実質不可能で、参加できないと分かった途端、ブルべに対するモチベーションもほぼほぼなくなっていた。
今後は特にウルトラロングなブルべやウルトラタフなやつを楽しんでいけたらと思っている。

最後の夜明け
あまりの寒さに走り始めたことを後悔したほど

グレートイーストンで朝食
2大会連続コーンフレーク(笑)
実は前回ここでコーンフレークを食べたことで、意外と牛乳やコーヒー牛乳なんかを走行途中で接種するのいいのかも?って言う気持ちになり、それ以来けっこうコーヒー牛乳にはまっている。

フィニッシュまではまたキャッチしていなかったA組の何人かをキャッチ。
オレのゼッケン「AD」を見て、みんなドン引きしていた(笑)


無事にフィニッシュ
実は前回のLEL、メダルをもらい損ねている。
ブルべカードを渡したときにスタッフから渡されてなくて、嗚呼きっとあとからもらえるのかな、と思っていたらそれっきり。
ブルべのメダルで持っていないのは実は3枚ほどで、そのうちの1枚が2017年LEL

スタート時は白紙だったブルべカードもスタンプで埋まっていく。振り返ると感慨深い。

フィニッシュしたら
そりゃポテトでしょ、フライドポテト!!

翌日、やっぱりもったいないし走りに行こう!とライドへ。
でも当然か、脚はスカンスカンだった

 

出場しないながら同じホテルでブルべ前後に一緒に過ごしてリラックスすることができた岩佐くん。
ブルべの中で大事な友人の一人だ

 

イギリスを出国
飛んだ瞬間、すべての出来事が過去形の思い出に代わり、まるで色彩が抜けていくような感覚に見舞われる。


そして帰国、現実へと戻っていく。