PBP 2019 ~C'est la vie~これもまた人生

まずは
何はともあれ無事にパリブレストパリ(以下PBP)より帰国しました。

たくさん応援いただきありがとうございました。

 

今回のPBPは、前回のPBPと同様に思い出に残る、そのいい思い出も悪い思い出もすべてこの先も背負っていくだろうと言えるものでした。

ふと走っているとき、現役時代によく口にしたフランス人語を思い出しました。

C'est la vie
セ・ラ・ヴィ
「これが人生さ」「人生ってこんなものさ」「仕方ない」

そんな意味でしょうか。
どんなことでも起こってしまうとそこには戻れない。いいことも、そして悪いことも。

 


公約通り、今年は1番でゴールすることを狙いスタート。序盤からほぼ自分の考えていた通りのシナリオで、そしてコンディションも十分すぎるほど上げられたという自負はありました。
ただ最初のコントロールで意思の疎通ができてなくて、補給に時間を要してしまい、そこまでにB組で抜け出した他の3人に置いて行かれてしまいました。そして結果的には彼がゴール上位3人でした・・・

気を取り直して500㎞過ぎからの登りを前に再度集団から抜け出し、ブレスト前に追いつかれるもののブレストで再攻撃。ここで完全に抜けだし成功。
30分以上に差を徐々に詰めていき、ルディアックの前の丘で10分を切っているとの情報。
この時点でB組3人を除いてA組は全員吸収し4番手に。

ルディアックでは再度補給のコミュニケーションに失敗し出し切った状態から補給無しで更にその先100㎞ほど。更にペースを上げていたものの完全にエネルギーは枯渇して頭も動かなくなりはじめ、ここでルートミスして10㎞行き過ぎてしまいました。
今回GPSナビゲーションは一切使用せずルートの矢印のみで走行していたため、10km行き過ぎたところからUターンして交差点や分岐点をひとつひとつ確認しながらの走行で20kmに1時間以上要してしまいました。
完全に身体を壊してからの補給は何の役にも立たず、そこからゴールまではただただ惰性。実際明け方には身体が熱を作り出せず睡魔に勝てず、15分ほど気温3度の中で寝ることに。うとうとしているときは現実なのか幻覚なのかも良くわかりませんでした。
実際1番を目指していて、その目標が達成されない時点で自分の中では2番でも10000番でも、41時間でも60時間でも特に意味はないと。ただ言えば、早くこの痛みや辛さからは解放されたいということだけでペダルを踏んでいました。

49時間44分。
前回は43時間で走っているのでタイムは特に意味は感じないです。
序盤向かい風で少し様子見になり小集団になって活性化するのだろう、だからタイムは前回より遅くなるだろうとは予測していました。先頭は結局44時間台とのこと。
もし合流できていれば、と思ってしまうけれどそれも含めての「セラヴィ」。
今回先頭は56歳。
今の体力は4年後更に削られるでしょう、しかしこの3回の経験と気力でカバーできるとすれば、それは55歳がピークなのだろうと思っています。
日本からのハンディ、時差や土地勘、言葉など、そう考えると多分次が狙えるラストチャンスだと思っています。
今回は自分のマネージメントの甘さもあり自分の思い描いた結果を残せませんでした。
しかし、41時間を出すことはできるという自信を得ました。
PBPがブルべスタイルになってから、いまだ一度も42時間を切っていません。そういう意味では前回レンハルトのたたき出したタイムは100m走の9秒58に相当するもので、41時間台は9秒5以内、「神の領域」と言ったところでしょうか。

自分が4年後に神の領域に入れるのかはわかりませんが、もしかすると「見てはいけない神の世界」を見てしまったのかもしれません。
このウルトラディスタンスのPBPで、もし100年の歴史の中で日本人が最初に戻ってくることができるのなら・・・歴史を塗り替えてみたいですね。

4年後に向けて、あと1回だけチャレンジしてみたいと思います。

今回のチャレンジを応援してくれた皆さん、本当にどうもありがとうございました。

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今回の使用バイクは、まだ国内デリバリーが遅れている新型のEM525
春先にAg2rが少し使用していたモデルだ。

エディメルクスのフラッグシップモデルというだけあり、その作りはプロライダーの走りにも応えるものだ。
ブルべで使うには剛性が高い能力は否めないが、ホイールを前回同様のカンパニョーロ・ゾンダをチョイス。これはスポークがステンレスなので衝撃緩和に有効なため。そしてタイヤはパナレーサー・レースA 28cを。しなやかさとエアボリュームで1,200kmを快適に、そして全力で攻撃できるモデルだ。

そのほかにもカンパニョーロ・スーパーレコード12スピードEPS、フィジーク・アリオネオープン、LOOK KEOペダルなど、堅実でありながらも十分な性能のスペック。自分への言い訳しか存在しない。

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ジャージはラファのブルべジャージをチョイス。しかしビブはペダリングでのロスを軽減したいのであえてプロチームビブを。

そしてシャモアクリームは丁寧に、特に股ずれや糸の擦れそうなところには入念に塗っておく。
それでも汗を相当書くようなら、途中で塗り足したほうがいいだろう。
パッドや雨や汗で水を含みだすと、生地は突然カッターナイフのように変身し、身体じゅうを切り始める。
ラソンで乳首に絆創膏を貼っておかないと切れるというのも同じことだ。

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スタート直前(撮影:川邊君)
他の組のスタートよりもA組やB組は表情が硬いと思うのは自分だけだろうか。

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本当に申し訳ないが、今回は途中からスイッチ入ってカメラが重くて邪魔と感じてしまいロクに写真を撮らず、撮ったのが結局この1枚だけ・・・
モルターニュの登りでペースは上がり集団は一列、そして分裂。
これをきっかけに30人ぐらいに目減りする。