2021 岡山1200 ③ 4日目

朝4時半、目が覚める。
普段の起床時間と同じ。昨晩は宿泊客が多く、洗濯機が空かなくてかなり粘ったが22時に諦めて就寝、6時間以上ベッドで睡眠した。着替えは2セットあるので今日走るもには困らない。

この2日間でホテル滞在時間は23時間ほど。朝食もしっかりと食べたしホテル代は元を取ったろう。
この日も山本くんと一緒に朝食。納豆ご飯に焼き魚や卵にウィンナー、そして〆のカレーライス。残る距離は180kmほど。200kmブルべよりも小一時間ほど短い距離だ。

尾道から御調へ抜ける峠、2日目に下ってきた峠を登る。そして交通量が毎回通るたびに気になる府中市から伊原へと抜け吹屋へと進んでいく。
標高は500mほどまで登るが、険しいというほどでもない。むしろ矢掛からの旧山陽道、国道486号の平坦区間の方が、交通面や風など走りにくい印象だ。

 

夕方4時の83時間半が目標ゴールタイム。6時間ほど残しているので最悪の場合はなんとかなるだろうし、山本くんはゴール後そのまま輪行して帰宅とのこと。そしてオレはゴール後もう一泊してから帰宅するのだが、ホテルまでの移動は暗くなってからは嫌だし、あまり遅くなると晩御飯に出かけるのも億劫だ。
途中走りながらほぼオンタイムでの進行を確認する。しかしこれまで通り、帳尻を合わせるためにペースアップするのではなく、きっちりとペース配分を保つことだ。それが一番疲れない。

 

今回荷物はホテルで直送したが、最後のこの区間バックパックを使って荷物持参で走行。
ドイターのウルトラライドというコンパクトなモデルだが着替え1セットと少し大きめのライトやGPSなどを4個同時に充電できる大きめの充電器、そして万が一に備えてカンパニョーロのEPS充電器を入れてもまだもう少しゆとりがある。大きさの割には重い感じだったが、バッグ上部に重いものを放り込み、肩甲骨あたりで重さを受け止めて体感的な重量増を抑え込む。

 

井原に入ると岡山県岡山県を走るのははるか昔の出来事のように感じる。
ここで一度コンビニ休憩し吹屋を目指す。
吹屋まではダラダラと上り続ける。それほどきつくはない。自然を楽しみながら進んでいく。
ベンガラの朱色が映える吹屋。ブルべで通うようになってから家族でも訪れた。だいたい来るのは夜か早朝で、お昼ごろに来たのは家族で遊びにきたとき以来か。

吹屋でランチを考えていたが、予定していたそば屋が閉まっていたのでそのまま下り切ってコンビニ。多分予定してたよりも早くゴールに着いたのは、ここでそば屋に入らなかったからだろうか。

成羽渓谷は岩の間を抜けていくスリリングでダイナミックなルート。それこそ10回近くは走っているだろうか。さすがに日中と言うことで交通量は意外と多く、ライトを点灯させて存在をアピール。こちらが見えているから向こうも見えているとは限らない。デイライトの時は光をやや上に持ち上げてミラー越しの視認性を向上させる。

成羽川を渡り国道313号へ再び合流しコンビニへ。
美味しいそばの予定だったがコンビニランチは残念だが仕方ない。
最後の峠は矢掛に抜ける県道35号。峠の名前は知らない。高さのわりに峠と言うほどのものでもない。
矢掛からは清音そして備中高松城水攻めの舞台となった足守川へと進んでいく。途中備中国分寺の五重の塔を見て今回の長い旅は終焉を迎えようとしている。


丸四日間も山本くんと行動を共にし、今こうやって真剣にブルべに向き合っている(決して競技思考と言う意味ではない)若者が何かを得たくて教えを乞う。
自分は人生のほとんどをサドルの上で過ごしてきた。いい歳してホントなにも知らないが、自転車に関しては知らなくていいことも知っていると言って過言ではないだろう。例えると1教科万点を除いて他は赤点と言ったところか。
幸いにも?その半生の前半はロードレースという競技の頂点を目指して海外へ進み、ヨーロッパでプロのロードレーサーとして9年もの間「職業」として大好きな自転車で飯を食うことができた。
燃え尽きることなく国内の実業団チーム、そして引退後もこうやってサドルの上に跨り、いろいろな景色を楽しんでいる。
その経験に蓋をするつもりはない。プロだろうがアマチュアだろうが、ブルべを楽しむ愛好者だろうが教えて欲しいのならば基本的に惜しみなく伝えるつもりだ。

気がつくと52才。いつまでこうやって好きで走る、自分の望んだペースで走ることができるのかはわからない。
30代の頃と比べると苦笑するしかないほどにスピードは遅い。プロ時代のトレーニングで走っていた道を走ると、時速30キロで登っていた登りが今や時速15キロだったりする。
それはそれでいい。いくらアンチエイジに取り組んでも押し寄せる加齢には叶わない。いつかきっと干物みたいになって力も入らなくなり、そっと棺と共にこの世から消え去るのだろうと思っている。
だからこそ走りたいと思うときは走り続けたい。理屈を並べても結論はそれだけの話。

自転車で走るのが好きだから。

そして自分より若い世代が同じように走りたい、その時に何か自分の経験などを得たいと思うのならまんざら悪い話ではない。
今回のブルべでは、何人かの参加者といろいろと話をしたり話を聞いてこられたり。そうやって輪が広がっていった。


暑くて何となくざわついて感じていた日中もピークを過ぎて落ち着いた感がある。
15時34分、ゴールに到着。

83時間04分。ほぼ最初の予定通り。
過去にほぼ寝ずに走り切った北海道1200の時は頭がボーッとして体の痺れが気になっていたが、今回は初日こそ2時間しか寝ていなかったがその後は2泊で23時間ホテル滞在し14時間以上寝ている。

過去にLELを走った時、かなり前を走る選手でさえしっかりと睡眠していた。
パックライト トラベルファー(軽装で遠くまで走る)
みんなで協力して遠くまで走り、そしてしっかりと睡眠。

PBPだけがやや例外で、先頭ではパックで寝ずにひたすら1200kmもの間ロードレースをしている。
日本では正直ゴール後のダメージを考えて、そして安全を考えて寝ずに1000km以上を走る気は今のところない。
岡山1200の計画は、自分の今の能力を把握し無理も無茶もなかった計画で、だからこそその通りにできたのだと思っている。

しばらく1000km以上のブルべの予定はないが、またSR600や600kmのブルべで、新しい景色を楽しめたらと思う。

 

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なにが大事って朝ごはん

温かいご飯に味噌汁。個人的にオレンジジュースも捨てがたい!

 

 

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今回のブルべ、いたるところで1両の列車に出くわした。

過疎化で地元の人には深刻な問題もあるのかもしれないが、こうやって他所からきて鉄道好きにはたまらなかった。

 

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井原のコンビニで休憩

今回のバックパックは、ドイターのウルトラライド
レースシリーズを通勤の時のメインにしているが、B5のPCも入るし軽量だしこの上ない。が、背中のポケットを有効に使おうとすると少し長さの短いウルトラライドの方が都合よい。

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今回4日間けっきょくポツっと一瞬降った以外、天気に恵まれた。むしろ日焼け対策で日焼け止めクリームを塗らないときつかった。

 

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べんがらの町、吹屋

 

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何回来てもいい雰囲気だわ

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備中国分寺の五重の塔で撮影

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今回の1200kmのゴール地点に到着

主催してくれたAJ岡山の関係者の皆さん、どうもありがとう。