SR600紀伊山地 

SR600
ブルべに魅力を感じてはまっているからといって、SR600にも魅力を感じて何度も走るというのは、最近はっきりと言えるがイコールではないのだと思っている。。
特に単独でのSR600となるといろいろなことがブルべの常識でも計り知れない。もうブルべという枠の中には入っているが、ちょっと毛色が違う。自転車が好きだと言っても、ロード好きの人にMTBシクロクロスまで含むのか、というのに似ているのかもしれない。
そもそもブルべを好きな人って、一般的なサイクリストの常識の範疇にない、と一掃されそうだが、その人たちからしてもSR600単独走、それも宿泊施設を利用しない、基本「ノンストップ」ともなると・・・
同じブルべを楽しんでいる人からも
「変態ですね、意味わからない」と言われると・・・

 

 

国内で5つめのSR600「紀伊山地」がオープンした。
コースは基本パーマネントでいつでも走っていいい。
と言っても標高を高いところを走る影響でフジや日本アルプス、北関東に四国山脈でも冬季閉鎖の影響で通年は不可能だ。
紀伊山地竜神スカイライン冬季閉鎖の影響で3月25日の朝7時以降でないと通行できない。個人的には、通行可能ならば冬期アタックなども興味あったのだが。

最近ありがたいことにスケジュールはかなりタイトだ。スケジュールを調整して、しまなみ縦走からそのままアタックすることに。尾道から泉佐野へ移動してちゃんとベッドで寝る。自分的にはハードなブルべの前は必ずホテルで寝ると決めている。車中泊は避けたい。
そして3月25日朝9時にスタート。

f:id:masahikomifune2:20190329114121j:plain

今回のバイクは定番のエディメルクス・ムーラン69

タイムアタック仕様。天気も予報では2日間雨の心配はない。予報では

f:id:masahikomifune2:20190329113937j:plain

友人の野村くんがスタート地点に激励に来てくれた

何度SR600をチャレンジしていても直前までやめようという気持ちが強くなっていくし、恐怖が襲ってくる。しかしスタートするとどんどん壁を越えたいという気持ちが大きくなってくる。これはブルべを走っているときにはなく、PBPですら薄い。

序盤いきなり葛城山の急こう配がここから先の険しさを暗示している。
これは私感だが、SR600は標高2,000mを最低でも越えている峠を何度かパスしてほしい。FUJIや日本アルプスだと峠をパスするごとに、筋肉量の多い自分なんかは徐々に酸欠に陥り回復してこない感が強くなる。そして何度車山高原あたりでペダルを漕げずに歩いたり夜中の道端で座り込んで寝たことか。
それが楽しいというのは先の「変態」カテゴリーそのものなのかもしれないが、それをどうやって克服するのか、したのかがSR600の最高の醍醐味なんだと思っている。
四国山脈やここ紀伊山地は標高は低い。ということは何度も低い峠を越えるのだが、プロフィールの特性上、険しい「壁」のような坂を何度も越える。
これは信州の3つのSR600とは正直戦略的に攻略方法が違うと思っている。まぁそれも楽しいのだが。

葛城山の簡易舗装の下りは、バイクに固定しているものすべての強度テストのようだ。
こんなところで安全マネージメントが100%でないものは、例えばマウントからメーターやライトが飛んでいくこともあるだろうし、キューシートやバッグなども跳んでいく可能性がある。

f:id:masahikomifune2:20190329114102j:plain

紀の川を渡り、丹生都比売神社へと上っていく。
ここで前方に別のSR600アタッカーが。まさか同じ日、平日にアタックしている人がいるなんて。
挨拶をして激励、そのまま先を行く。
丹生都比売神社のあとは再びダウンヒルマトリックス時代や多くのブルべでも定番な南岸道路を東へと進んでいく。

f:id:masahikomifune2:20190329114408j:plain

グランフォンド吉野で慣れ親しんだ吉野山や熊野へと抜けるR169など、土地勘があることに助けられている。
朝9時にスタートなのでナイトランに突入したのは七色ダムへと向かっている途中。やっぱり七色ダムはナイトランか。不気味さが気温以上に寒さを増している。この辺りは十分「酷道」認定されているような道がたくさん。記憶したキューシート、マップデータの表示されているポラールV650、闇の世界で唯一自分の居場所を作り出してくれているキャットアイVOLT1700・・・熊野の神々しい山は味方してくれるのか、はたまた好まざる客としての態度を見せるのか・・・ただライトの光の世界だけに居場所を感じつつ進むしかない。

丸山千枚田
現役時代何度も苦しみながら走った登り。ここを下っていきフォトコントロールポイントで撮影。千枚田なのに田んぼは1枚も見えない闇の中。

f:id:masahikomifune2:20190329114311j:plain

まさか丸山千枚田にこんな真っ暗の時間に来ることになるなんて(笑)

 

新宮までは始めて走るルートで抜けていく。そして新宮ではポツ、ポツ、と予期せぬ雨。
朝の時点で雨予報はなかったのでここだけ?と思い進むが、意外な降りっぷりにコンビニへ避難。防寒具も雨対策用品も持っていない。雨なんて思いもしないほどの天気だったのだが。
コンビニで雨対策品を買い、那智の滝へアタック。

那智のお土産屋さんを抜けるころ、滝の水しぶきか?と言うほどの雨に。なんだこれは!!色川の集落にあったバス停、いや小屋だな、ここに避難。念のためバスの時間を見る。始発は6時47分。ということは最大6時間滞在できるな(笑)まぁそれまでに雨もやむだろうし。
しかし雨雲レーダーを見てもけっこう激しく降り続けるようだ。それも勝浦のあたりだけ・・・結局6時半ごろまで滞在。

f:id:masahikomifune2:20190329114639j:plain

寝るときにカッパを一番外にして熱をにがさないように。

それでもしばらくすると結露して濡れてくるで寝てられない。かといって脱げるほど暖かくはない。

やはりレインジャケットはちゃんとした高機能のものがいいのだ。

f:id:masahikomifune2:20190329114829j:plain

先客が( ゚Д゚)
これもシェアだ、仕方がない

f:id:masahikomifune2:20190329114505j:plain始発まではお客さんも来ないだろうし、雨だしちょっとお借りしますね(笑)

朝改めてみると、すげぇところで夜を明かしたな。

 

明るくなるまで雨宿りしたことでライトのバッテリーは温存できた。が、情報収集に予定以上にモバイルバッテリーを使ってしまった。スマホGPS、バッテリーは足りるのだろうか・・・


玉置山を登り始めてトンネル手前を左・・・道がこの先ないとの看板。仕方なくトンネルを抜けるが、もしかすると本当は通れたのかも、とUターン。が、やはりなかった。これだけで6kmの遠回りをしてしまった。
険しくないとは言わないが、まだ車で通ってもいいかなと言うレベルなので「まし」だ。この辺りは車で来たことを心底後悔するような道はたくさんあるから。

f:id:masahikomifune2:20190329115131j:plain

 

本宮大社では大休憩。
食堂でうどんとどんぶり。この間に少しでもモバイルバッテリーとスマホを充電しておく。

f:id:masahikomifune2:20190329114925j:plain

ちゃんと食べるの、しまなみ縦走でのたこ飯以来だな(笑)

ここからは未知の世界。天候は安定し雨具を処分。空いたポケットのスペースには食料を調達。そして竜神でも最後にチョコビスケットを購入。じつはこれが功を奏した。
護摩壇山~野迫川~高野と補給できるところがない。最悪は海南までないかもしれない。想定は6時間分。最悪はそこからコーラでも自販機で買って脱出というプラン。
そして護摩壇山へアプローチ。明るいうちに行けるのか?と思っていた矢先
ポツ、ポツ・・・
おお!なんてこった!
また雨が降り始めた。
竜神で宿を探すのか(バス停以外)進むのか。
どちらにしてもかなり濡れる。どうせ濡れるのなら進むしかない。よりによってルート中で最も標高の高い護摩壇山で。
雨だけだったのが標高1,000mを越えたところから、風の通り道なのか爆風。
写真撮影の時も身体がふらつく。予想以上の風で驚く。長居は無用、さっさと下る。
下りでは雨がやんでくれたが、実はこれもやっかい。
雨の時は意外とケモノは出歩かない。が、雨上がりはケモノが満ち溢れている。
ここから高野そして海南に向けてのダウンヒルはホント鹿だらけ。大きいものはツノも立派で、トナカイか?と思うほどだった。

f:id:masahikomifune2:20190329115209j:plain

苦しかったが、こんなのを見せられるとご褒美のようにテンションが上がってくる。

 


バス停滞在とファミレスそしてコンビニでの滞在時間がまるまんまロスタイム。
予想以上の消耗でスピードも出ない中、3時57分にゴール。トータルタイム42時間57分だった。


標高は低いので酸欠の心配はない。
しかし勾配がかなり厳しいので(四国ほどではない)SR600的には難易度は低いが、簡単ではない。
補給地点、ナイトランの危険度を考えるとけっして「初心者」にはおススメではない。もし初心者的なプランで言うと、早朝にスタートし那智もしくは新宮で宿泊。ちゃんと寝てから次は竜神護摩壇山アプローチあたりで宿泊がいいのだろう。


今回がSR600の10回目の完走。
時間や金銭面でも余裕があるなら海外SR600も挑戦したいのだが現実は国内SR600でいっぱいいっぱい。
何度アタックしても苦しいのだがしばらくするとまたチャレンジしてみたい感覚がSR600にはある。

PBPの前には日本アルプスなど標高の高いSR600にも再び挑戦したいな。