SR600京都 1回目のチャレンジ② 高浜~京都

SR600の魅力として感じるのは、プランニング、セルフマネージメント能力だろうか。
登山ほどの過酷さはないが、真夜中に民家もない、車も通らない、ケモノだらけでトラブルがあったら命の危険を感じるようなルートを走り抜ける(それを日中に回避する)と言うことを計画し、その通りに実行していく。
そして計画は時として残酷にも打ち砕かれ、それをどう修正して何もなかったかのように完走するのか。個人的にはそこが一番のSR600の醍醐味だ。

過去に標高2,000mの美ヶ原で雨嵐、ビーナスラインの八島で濃霧で5m先が見えない真夜中で低温、そして霧ケ峰で立っていられないような夜中の爆風やビーナスラインで氷点下10℃・・・って、全部ビーナスラインやないかいッ!
まぁ真夜中にビーナスラインを駆け抜けたチャレンジャーもほぼいない(単独ではもしかしてオレだけ?)やはりそのリスクとどうやって立ち向かうのかが、言い方が不謹慎かもしれないが、リスクを多く感じるルートの方が達成度合いもだが面白さ、充実感がハンパない。
基本ノンストップをベースにするのは、どちらかと言うとノンストップの方が難しくなるから達成感も増大する、と思っている。

 

装備としては、基本自転車丸々1台持って走らない限り・・・フレームの交換がレギュレーションで認められていないと考えると、その他のパーツと交換に要する工具すべてを持たない限りは「完璧な装備」とは言えないだろう。ヘッドパーツが壊れたり、ハンドルが折れたりサドルが割れたりなんて言うトラブルが起きない保証はない。


リムが曲がった、リムが劣化で裂けた、と言うトラブルや、ライトが壊れた、携帯が浸水した、ぐらいが今までで深刻なトラブル。パンクは意外と少なく、多分SR600を20回ほどのチャレンジで5本もしていない。四国の時はゴールしてタイヤを見たら、カッターナイフや彫刻刀で誰かにいたずらされたのか?ぐらいにズタズタだったがパンクはしなかった。

速く走るには軽くする必要がある。安全ラインに近づけるにはたくさんいろいろ持つ必要がある。しかし荷物が増えるとスピードが落ち、それゆえにまたスピードが落ち、走行時間が増える、バイクが重くなって運動性能が落ちる、だからまた装備が増える・・・
軽いと軽快だが当然回避できることが減ってくる。
どちらを取るのか?どちらが正しいのか?
どちらも正しいと思うし、どちらを選択するかは人それぞれだ。
ちなみに今回のSR600京都を終えて次回チャレンジには携帯用の枕を持参しようと決めた。空気で膨らませるタイプなら100gほどだろう。軽量化を進めると100gは「重い」しかし必要だと感じた。

要はその人にとって必要なものは、変わるということである。


シーサイド高浜、建物内で休憩可能。暖房が効いていて外が5℃以下なのに中に入るとウィンドジャケットや反射ベスト(ジレ)は不要で心地よい。
ベンチに横たわって寝ようと思ったが思いのほか痛い。いっそ床に寝転んだり壁にもたれたほうが寝られたかも、と思うぐらいで、結局3時間半近くグダグダと寝ていたがそのうち3回ぐらい目が覚めた。途中でエマージェンシー用に持参していたMARUTOの輪行袋を枕替わりにして寝た。その経験で

ここは次回は絶対枕だな、と。
海外を往来していた時は機内で寝るのに持っていたが・・・

あまりにも快適な温度すぎて5時過ぎに出る予定が結局5時半を過ぎてしまった。
エンゼルラインは7時からで、なるべくその時間に突入が望ましい。
7時05分にエンゼルラインへ。
朝から快晴、景色が良くついつい写真を撮影しながらの走行。頂上まで約500mの高さを登り、下ってくる。そしてここからが林道若狭幹線だ。
グラベル区間の林道、どんなものか楽しみだが今回はカーボンホイールにタイヤはロード用の26c、空気圧は6気圧。無理は禁物。多少スピードが落ちてもワンパンクで10分以上をロスすることを考えると、安全走行でリスクを冒して3分速いよりはいい。

チェックポイントがややルートから外れていたが事前にチェックしておいてよかった。きっと知らなければそのまま通過して、この林道だけで半日ぐらいロスしたに違いない。景色は悪くないが、よそ見をしてパンクは笑えない。慎重に慎重を重ねて走る。

林道を終えて道の駅三方五湖へ。
当初別のプランでは、エンゼルラインを閉まる前に通過してここで仮眠を考えた。が、そうするとスタートが0時とかになるのであまり理想的ではない。ここの道の駅もこぎれいで、実は以前自走で北陸へ行くときに仮眠チェックしているところだ。

ぐるっと若狭をまわっておにゅう峠入り口となる国道27号線の東市場交差点へ。
予定通り?欲を言えば予定より30分は速く走れるかなと思っていたので30分遅れか。ここのコンビニで腹ごしらえし補給食を購入。ここからは途中越えを越えるまでまともに補給できない可能性ありだ。

おにゅう峠が全面アスファルトになってから走るのは実は今回初めて。
前回は頂上までの数kmがグラベルだった。当時それでロードバイクでSTRAVAセグメントトップ5ぐらいだったと思うのだが、今のタイムを見ると舗装されて一気にタイムが上がっている。それだけたくさんの人がアタックに来ているとも言える。
しかしそれでも崩落個所が見受けられ、舗装はされたものの当時の険しいおにゅう峠そのまま
頂上ではオートバイの若者が滋賀県側はあちこち崩落していて気をつけてください!とアドバイスをくれ、オレの方からも福井県側もだよ、と伝える。
しかしこういうときの基準値が難しく、もしオレが福井県側は結構激しく、と言っても、滋賀県側の「ちょっと石落ちてますよ」と一緒だったらどうしようとか・・・
だが、断然福井県側の方が崩落していた。よくはないが良かった。大袈裟なオッサンだと思われることはないだろう。

おにゅう峠のあとは能見峠。
キューシートでは「それほどきつくありません」とのことだが個人的にはそれなりにきつく感じる。急勾配ではないがゆるくもない。高さもある。
裏花背は高校の頃や実業団時代に何度も走った、あまり好きじゃないしいい思い出もない峠。プロ時代は練習で全部アウター53Tで21Tとかで走っていたが、今回は39T×26Tや29Tだった・・・知っている道では、昔のイメージを持って走るのは辞めないと、あまりにも遅すぎて頭の中から気持ち悪くなってくる。
百井の激坂もきっと初めての人には到底国道に感じないし、むしろ間違った!と思うような道だ。ここまで来たらおにゅう峠をセットにした京都市北部の山岳コースをクリア。しかしこれで油断してはいけない。実は一番めんどうなのは最後にやってくる。

前半や中盤にメインが来ると、ラストはデザート的に感じるが、このルートだとまるでイタリア料理のコースよろしく、前菜がうますぎて食べ過ぎ、ピザやパスタが出たときにがっついて、お腹いっぱいでさぁ帰ろうと思ったらここからまさかの肉料理・・・長い例えで申し訳ないがそんなイメージか。

信楽伊賀上野・山城地域の山岳エリアは自分のライドフィールド。犬打峠など最近の通勤遠回りルートの一つだ。
高さは、ない。高低差はそれなりで、それよりも勾配がヤバい。
馬頭観音は地味ながらきついし、信楽から多羅尾へ抜ける県道138号も峠ではないが一筋縄でいかない登りが続く。
三国越林道は勾配は大したことはないが、400mほど登り、童仙房を抜けて和束まではブラインドコーナーの下りに時折登り返しがやってくる。登りで落ちたグロスアベレージを下りで取り戻せるほどに還元率のよろしくない峠道だ。
そして最後のデザート??は犬打峠からの鷲峰山。ここはまさに現役時代からの練習コース、特に夏の朝練はもっぱらここだった。
下りも自分が知る道の中で唯一とも言える「ロードで行っちゃダメな道」認定の地福谷林道が待ち構える。正直何度も走ったことのない道なら夜中にカーボンホイールで通らない。いや、知っていても通るのは嫌だったが。
(スタートまで忙しくて、ホイールとブレーキシューを交換するのが面倒だっただけなのだが)

比較的スムーズに走れていたが、2日目のナイトランとなる馬頭観音で雨。
数日前の天気予報では降水確率は降雨はまずありえないはずだったのだが。
自分の場合、なぜかSR600で天気予報が外れて雨や嵐が多い。
百井を過ぎたときにポツっときて、雨雲が上空を覆っているので心配していたが。

馬頭観音では本降りの雨。と言うか気温が低く一瞬
「あれ?雪??」と感じることも。
気温も一気に3℃ぐらいは下がった感じ。これはヤバい。
馬頭観音の下りは勾配もそれなりで、カーボンホイールで下るのは危険だ。
森の中なので濡れていないところを利用して曲げていく。これも知っている道だからこそなのかもしれない。

信楽盆地に入ると雨はやんでいた、と言うか道もドライ。昔から信楽盆地は、周りがいいときはここだけ悪く、逆に周りが悪いときはここだけ良い、ということが多いエリア。
こんな極端な温暖化が始まる前は、関西の最高気温&最低気温ともに信楽だったきいたことがある。まぁ40年以上前の話だが。
20代の頃は、和束までは寒いと言いながら走れても、信楽町朝宮に入ると積雪30センチなんてザラだったし、和束で積雪や凍結の時は、信楽はこの世扱いではなかった(笑)

余談だが信楽盆地を抜けると雨、そして和束に入るとドライ・・・後半は雨に翻弄された。

信楽中野のコンビニは、いつも練習で止まるところ。まさかこんな真っ暗で立ち寄るなんて不思議な気分。
御斎峠は徳川家康本能寺の変の際の抜け道を言われている峠で、20才の時には既にここを走っていたから30年以上走っている峠。コンパクトながらも伊賀上野の夜景はきれいだ。
夜中の三国越林道を越えて童仙房からのダウンヒルからの和束そして鷲峰山。
雨の影響もあり予定よりも約1時間半ほど遅れている。ペースも上がらないしマイペースで進むしかない。地福谷林道は安全に。パンクしたりホイールを壊したらここまでがすべて台無しだ。

夜中の宇治川ライン、ここも昔は走り屋のメッカで反対車線走行なんて当然。何度か目の前から車が来て、目が合ってお互いに焦り顔というのがあったが。今は道がかなり改善されてコーナーが半分以下で車が減ったのだろうか。そもそも走り屋っていうカテゴリーが昔ほど人気ないのかもしれない。

宇治川ラインに入るとプレッシャーが抜けたのか眠い。そして1時51分、40時間51分でゴール。
このルートなら40時間ぐらいかなと思っていたのでだいたい想定範囲だが、ラスト100kmでの雨が約2時間ほど狂わせた。
びしょ濡れで待機したり、装備品(モバイルバッテリーやケーブル類、ブルべカードなど)を再びパッキングしたり。
しかし今回のチャレンジで、次回に向けての課題はすくい上げられた気がする。

忘れちゃいけないと途中でメモ書きしたリストを見ていると、あとから考えると「ホンマにそれ必要かなぁ」と感じることもあるが、とりあえず近いうちに100均などで購入して準備・対策をしてみるか。

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よく寝た。結局3時間半以上滞在した。

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走り出してすぐに朝日が

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エンゼルライン。

所々勾配はきついが、それほど走りにくいとは感じない。

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気配を感じてみると、カモシカ

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エンゼルライン頂上

なかなかパンチのある登りで、危うく堕天使になるところだった・・・

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林道若狭幹線
まぁ想像通りな感じ

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先日の爆風の影響か、かなり木々が散乱していた。

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おにゅう峠も落石などが。

 

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昼過ぎのおにゅう峠は暑いぐらいの日差し

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琵琶湖大橋ではポツポツと。上空には雨雲が覆っていた。

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自分の庭認定の鷲峰山
でも夜は初めて

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地福谷林道
この後さらに激しくなっていく・・・

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0時51分ゴール

さ、帰ろ。長居は無用だ